第9回 PL法と製品表示の関わり

医薬品等の容器、包装または添付文書には「お肌に合わないときは、ご使用をおやめください」「爪に異常のあるときは、お使いにならないでください」等といった使用上の注意を記載することが薬機法により義務付けられていますが、この使用上の注意は、薬機法だけではく、PL法にも深い係わりがあります。

 

PL法(製造物責任法)とは、医薬品等を含めた製造物の欠陥を原因として人の生命・身体や財産に被害が生じた場合に、その製造物を作った製造業者等の責任等を規定している法律です。この「製造業者等」には、製造物を海外から輸入した者も含まれており、輸入した医薬品等の欠陥により消費者に健康被害が生じたような場合にも、このPL法によって責任を追求されるおそれがあります。

 

また、製造物の「欠陥」とは、製造物そのものの品質や安全性に問題があることだけを指すものではなく、使用上の注意をはじめとした製品表示等の内容が不十分であることも、欠陥と見なされる可能性があるとされています(図1参照)。

図1.PL法(製造物責任法)とは

 

実際に、使用上の注意が問題視された裁判例を見てみましょう。過去に広く報道されたのでご存知の方も多いと思われますが、薬用石けん(医薬部外品)の使用が原因で小麦アレルギーを発症したとして、その被害者達が石けんの製造業者等を相手に、PL法に基づく損害賠償を求める裁判を全国各地で行っているところです。

 

今年2月に、京都地裁において第一審の結果が出ましたが、そこでは、石けんそのものの安全性が問題視されたのと同時に「お肌に異常がある時、お肌に合わない時はご使用をおやめください。」といった使用上の注意は「使用者にとって、小麦アレルギー発症を回避するに十分なものではなかった。」との判断がされ、この石けんには欠陥があるものとして、製造業者は被害者達に対して損害を賠償すべき旨の判決が下されています(2018年11月2日現在、控訴中)。

図2.使用上の注意の内容が問題視された裁判例

 

これらの法律や裁判例を考慮すると、使用上の注意については、薬機法上の義務を果たすことのみを目的とした定型の文章を記載するだけではなく、PL法対策として、その製品の特性に合わせた適切な内容を検討し、記載された方が望ましいものと思われます。

 

 

出典:平成30年2月20日 京都地裁第1民事部判決(事件番号 平成24(ワ)1230)